ChatGPTは利用を拡大させつつも、世界中で利用の規制が広まっています。現在ChatGPTの使用が規制されていない日本も無関係ではなく、世界的な規制の流れを受けて、各企業に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、ChatGPTを利用している、または利用を検討している方は、世界的な規制の流れを理解しておく必要があります。
本記事では、ChatGPTの規制状況について、日本と海外の最新動向を詳しく解説します。各国の規制の現状、規制が行われる理由、そして実際に起きた悪用事例などを具体的に紹介しています。
この記事を読むことで、ChatGPTの規制動向を正確に理解し、適切なリスク管理を行いながら、ビジネスや日常生活でChatGPTを最大限に活用できるようになるでしょう。
|監修者
(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO他複数社AI顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ(会員5,000人超)を運営。
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日本のChatGPT規制状況
日本のChatGPT規制状況は、他国と比較して比較的緩やかな姿勢を示しています。
2023年4月14日の衆議院内閣委員会において、ChatGPTを規制する意向がないことが官房長官によって明確にされました。むしろ、公共サービスでの活用を積極的に検討する方針を示しており、生成AIの利便性を重視する姿勢が見られます。
この背景には、日本政府がAI技術の発展と活用による社会的・経済的利益を重視していることがあります。実際に、一部の公共機関ではすでにChatGPTの試験的な導入が始まっており、行政サービスの効率化や質の向上が期待されています。
今後の動向としては、日本政府が生成AIの利便性を重視する姿勢を維持し、積極的な導入が進むと予想されます。ただし、不正利用や情報漏洩などの問題が顕在化した場合には、規制が強化される可能性も否定できません。
そのため、利用者は技術の恩恵を享受しつつ、適切な利用方法や倫理的な配慮について常に意識をもつことが重要です。
海外のChatGPT規制状況
日本以外の海外におけるChatGPTの規制状況を紹介します。
- アメリカ
- カナダ
- 中国
- ロシア
- イギリス
- EU諸国
国によってChatGPTの規制の仕方が異なります。それぞれの国の規制について詳しくみてみましょう。
アメリカ
アメリカにおけるChatGPTの規制は明確に定義されていないものの、急速に進化するAI技術に対応するため、連邦および州レベルで多岐にわたる取り組みが行われています。
バイデン政権は2023年10月に「AIの安心、安全で信頼できる開発と利用に関する大統領令」を発令し、AIの安全性、プライバシー保護、平等と市民権、消費者保護など8つの政策分野にわたる措置を含めました。また、連邦取引委員会(FTC)はAI技術の監視と規制を強化する方針を示しています。
参考:米国におけるデジタルガバメントの現在地(一般社団法人 行政情報システム研究所)
州レベルでは、カリフォルニア州やコロラド州が独自のAI規制法を制定しました。とくに高リスクAIシステムに対する規制を強化しています。
参考:米カリフォルニア州で新たなAI規制法が州上院司法委員会を通過(日本貿易振興機構)
これらの規制は、AI技術の安全かつ倫理的な使用を促進し、ユーザーの信頼を確保するために重要な施策といえるでしょう。
カナダ
カナダにおけるChatGPTの利用は禁止されいないものの、個人情報保護とAIの倫理的使用に重点を置いた施策が進められています。
2023年4月、カナダのプライバシーコミッショナー事務所(OPC)は、ChatGPTが個人情報を同意なしに収集、使用、開示しているという苦情を受けて調査を開始しました。
また、2022年には「個人情報保護・電子文書法(PIPEDA)」が改正され、新たに「消費者プライバシー保護法(CPPA)」や「人工知能・データ法(AIDA)」が設立されました。
さらに、カナダ政府はFASTER原則と呼ばれる考え方を導入し、公正性、説明責任、セキュリティ、透明性、教育、関連性を強調しています。これらの規制は、AI技術の発展と個人情報保護のバランスを取るために設けられています。
参考:Guide on the use of generative artificial intelligence(カナダ政府)
中国
中国では、ChatGPTの使用が完全に禁止されています。なお、OpenAI側も中国からのアクセスを禁止しています。
2023年8月15日から施行された「生成AIサービス管理暫定措置」では、生成AIが国家安全保障や社会秩序に対する脅威となることを防ぐため、外国製生成AIの利用が禁止されていました。
さらに、中国政府は自国のテクノロジー企業が生成AI分野でリードすることを奨励しており、百度(バイドゥ)や騰訊控股(テンセント)などの企業が独自の生成AI技術を開発しています。
実際、中国の生成AIは品質が高いものが多く排出されており、日本を含め海外から注目を集めています。ChatGPTを禁止されているとはいえ、生成AI大国といえるでしょう。
これらの規制は、情報統制と国内技術育成を両立させるためのものであり、技術開発とイノベーションを促進しつつ、社会的安定を維持することを目的としているといわれています。
ロシア
ロシアでは、中国と同様に、ChatGPTの利用が規制されています。一方でOpenAIはロシアからのアクセスをブロックしており、APIへのアクセスも制限しています。
2024年、ロシアはChatGPTを含む生成AIの利用に関する規制を強化しました。これには、実験的な法的枠組みの導入、倫理基準の設定、責任保険の義務化、政府サービスや立法支援へのAI技術の適用が含まれます。
たとえば、モスクワではAI開発を促進するための実験的な法的枠組みが設けられ、連邦電子サービス「Gosuslugi」ではGPTベースの生成AIが導入される予定です。
※ロシア国内で開発された技術であるためOpenAIの規制措置の影響を受けない
参考:In a first, OpenAI removes influence operations tied to Russia, China and Israel(NPR)
また、ロシア政府は生成AIの倫理基準を策定し、生成AIの開発と利用における透明性と責任を確保することを目指しています。さらに、ロシア国内での生成AIの利用には厳格なデータ保護基準と検閲が適用され、違反者には厳しい罰則が科されます。
イギリス
イギリスではChatGPTの利用を禁止していないものの、既存の法律と新たな規制が組み合わさった施策が進んでいます。
イギリスのデータ保護法(UK GDPR)は、ChatGPTのような生成AIが個人データを処理する際に遵守すべき規則を定めています。これには、データの合法的かつ透明な処理が含まれており、とくに個人データの収集、使用、保存に関する透明性と説明責任が求められます。
また、国だけではなく、企業や教育機関単位でChatGPTの使用を禁止していることが報じられています。たとえば、イギリスの労働年金省(DWP)は、職員がChatGPTをはじめとした生成AIを業務中に使用することを禁止しています。
参考:A pro-innovation approach to AI regulation: government response(イギリス政府)
このように、イギリスは世界的に見て生成AIに対して慎重な姿勢を見せている国なのです。
EU諸国(イタリア・ドイツ・フランスなど)
EUは、AIの透明性、説明責任、公平性を確保するためのAI法案を検討中です。ChatGPTのようなAIシステムに対しても規制が適用される可能性があります。
これらの動きは、AIの発展と個人の権利保護のバランスを取ろうとするEUの取り組みを反映しています。このように、EUは世界的に見て、生成AIに対する姿勢が慎重です。
たとえば2023年3月、イタリアのデータ保護当局がOpenAIのChatGPTサービスを一時的に禁止し、EUの一般データ保護規則(GDPR)違反の可能性を指摘しました。これを受け、他のEU加盟国も同様の懸念を表明し、EUデータ保護委員会(EDPB)がChatGPTに関するタスクフォースを設立しました。
また、各国はEUの法律に従いつつも、ChatGPTの規制に対して違いが見られます。
国 | 規制状況 | 主な特徴 |
---|---|---|
イタリア | 積極的 | • 2023年3月にChatGPTを一時ブロック • プライバシー保護とGDPR遵守を要求 • 西側諸国初の具体的措置 |
ドイツ | 慎重 | • イタリアの措置に注目 • GDPR違反の可能性を懸念 • 必要に応じて同様の措置を検討 |
フランス | 比較的開放的 | • 過度の規制に警告 • EU独自のAI開発促進を重視 • EUレベルでの協調的アプローチを模索 |
今後、EUでのChatGPTの規制が強まることで、AI界隈だけでなく経済情勢にも影響が出る可能性があります。今後、EUの動向には注目しておきましょう。
参考:AI Act(EU)
ChatGPTが規制される理由
ChatGPTが各国で規制されている理由は、以下のとおりです。
- 情報漏えいリスクがある
- 嘘を出力する可能性がある
- 道徳・倫理観に欠いた出力の可能性がある
- 著作権侵害のリスクがある
上記の理由は、企業でChatGPTを利用する際にも考慮すべきリスクです。本章でそれぞれの内容を確認しておきましょう。
情報漏えいリスクがある
ChatGPTは入力された情報を学習に使用するため、個人情報や機密情報を不用意に入力すると、意図せず第三者に情報が流出する可能性があります。
実際に、サムスン社では従業員がChatGPTに機密情報を入力してしまい、情報漏えい事案が発生しました。
このリスクに対処するため、企業は明確な利用ガイドラインを設定し、従業員教育を徹底することが重要です。また、ChatGPTのオプトアウト機能を活用し、入力情報の学習を制限することも効果的です。 オプトアウトについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:ChatGPTのオプトアウトで情報漏えい対策!概要や設定方法を解説
とくに、ChatGPT TeamプランやEnterpriseプランでは、デフォルトで入力情報が学習されない設定になっているため、機密性の高い情報を扱う企業には適しています。
情報漏えいリスクを認識し、適切な対策を講じることで、ChatGPTの利点を安全に活用できます。企業は技術の進化に合わせてセキュリティ対策を継続的に見直し、リスクを最小限に抑える努力が求められます。
嘘を出力する可能性がある
ChatGPTは高度な言語モデルですが、時として事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」と呼ばれる現象を引き起こす可能性があります。
たとえば、歴史的事実や科学的データに関する質問に対して、一見もっともらしい回答を生成しながらも、実際には誤った情報を提供することがあります。ある弁護士が、ChatGPTが出力した存在しない判例を使用し、問題になったケースも報告されています。
この問題に対処するため、ユーザーはChatGPTの出力を鵜呑みにせず、常に他の信頼できる情報源と照合することが必要です。
また、重要な意思決定や公開文書の作成にChatGPTを単独で使用することは避けるべきです。さらに、社内でAIリテラシー教育を実施し、従業員がAIの限界を理解し、適切に活用できるようにすることが重要です。
ChatGPTが嘘をつくハルシネーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:Chat(チャット)GPTが嘘をつく4つの理由とは?問題になった事例も紹介
道徳・倫理観に欠いた出力の可能性がある
ChatGPTはOpenAIによって倫理的な観点から調整が行われていますが、道徳や倫理観に欠ける出力をする可能性は完全には排除できません。
たとえば、差別的な発言や過激な政治的見解、不適切な性的内容を生成してしまうケースが考えられます。
ただし、道徳・倫理観にもとづく判断は、現状では生成AIよりも人間の方が優れています。ChatGPTを利用する際は、その出力を鵜呑みにせず、人間の倫理的判断を常に優先させることが重要です。
このようなリスクに対し、企業は明確な利用ガイドラインを設定し、アウトプットの人間による確認プロセスを導入することが重要です。また、AIの倫理に関する社内教育を実施し、従業員の意識を高めることも効果的です。
生成AIの社内展開には、適切な社員教育が不可欠です。
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著作権侵害のリスクがある
ChatGPTはインターネット上の膨大な情報を学習しており、その中には著作権で保護された作品も含まれています。そのため、生成されたテキストや画像が意図せず既存の著作物に酷似し、著作権侵害となる可能性があります。
たとえば、ChatGPTが生成した画像が、著名なアーティストの作品スタイルを模倣してしまい、法的問題に発展するケースが考えられます。
このリスクに対処するため、企業はChatGPTの出力を常に人間がチェックし、必要に応じて修正を加えるプロセスを確立することが重要です。また、生成されたコンテンツの独自性を確認するためのツールを活用することも効果的です。
著作権法とAI生成コンテンツの関係は、まだ法的にグレーな部分が多く存在します。しかし、他者の知的財産権を尊重することは企業の社会的責任です。ChatGPTを活用する際は、常に著作権への配慮を忘れず、適切な利用と管理を心がけることが求められます。
ChatGPTと著作権の関係については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:【注意】ChatGPTの使用は著作権侵害リスクあり!商用利用は可能?
ChatGPTの規制・禁止に関するよくある質問
ChatGPTの規制や禁止についてよくある質問を2つ用意しました。
- ChatGPTが悪用された事例はありますか?
- ChatGPTは違法になりますか?
それぞれの回答を確認してみてください。
ChatGPTが悪用された事例はありますか?
ChatGPTの悪用事例として、最近注目を集めたのは、イラン関連アカウントによる米国の政治的分断を狙った工作です。OpenAIは2024年8月16日、ChatGPTを使用して偽のソーシャルメディアプロフィールや偽ニュース記事を作成していたアカウントを削除したと発表しました。
この工作では、リベラル派と保守派の両方を装ったアカウントが作成され、ChatGPTを使って既存のコメントを書き換えた投稿が行われました。また、偽のニュースサイトでは、政治家に関する虚偽の記事が掲載されていました。扱われたトピックは米国大統領選挙、イスラエル・ハマス紛争、米国ラテン系住民の権利など多岐にわたります。
幸いにも、OpenAIはこの工作の影響は限定的だったとしています。しかし、AIがこのように悪用される可能性があることが明らかになった点で、重要な事例と言えるでしょう。
ChatGPTは違法になりますか?
ChatGPTの合法性は国や地域によって異なります。たとえば、中国やロシアではChatGPTの使用が禁止されていますが、日本を含む多くの国では現在のところ合法です。
ただし、生成AIの急速な発展に伴い、今後各国でChatGPTを含む生成AIに対する規制が強化される可能性があります。とくに、個人情報保護、著作権侵害、偽情報の拡散などの問題に対応するため、国際的な規制の枠組みが検討される可能性もあります。
現時点では、ChatGPTそのものが広く違法化される可能性は低いと考えられますが、使用方法や適用範囲に関する規制が今後強化される可能性は高いでしょう。
企業や個人は、ChatGPTの利用に際して常に最新の法規制を確認し、倫理的な利用を心がける必要があります。
ChatGPTの規制について理解して適切に利用しよう
ChatGPTは各国で規制が進んでいますが、日本は世界から見ても開放的なポジションにいます。そのため、現状日本でChatGPTを活用する場合、とくに国からの規制を恐れる必要はありません。
しかし、各国の規制状況については注目しておくことを推奨します。日本は世界的な情勢に汲み取って、遅れて規制を設けることが多く、今後ChatGPTの使用が禁止される可能性はゼロではないためです。
本記事を参考に世界各国のChatGPT規制状況を把握して、今後の動向に注目してみてください。
各国のChatGPT規制状況を参考に、今後の展開動向を見据えた戦略立案が重要です。
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