ChatGPTを使えば論文要約は簡単に行えます。しかし、やり方や適切なプロンプトがわからず困っている方もいるでしょう。
欲しい情報を論文から的確に抽出できなければ、何度もプロンプトを編集して時間を食いますし、最悪の場合、結局自分で読み解くはめになります。
本記事では、ChatGPTでの論文要約のやり方やプロンプト、コツを実例とともに解説します。
ぜひ最後まで読み進めて、骨が折れる論文要約の手間を削減し、業務の効率化に繋げてください。
|監修者
(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO他複数社AI顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ(会員5,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現の為に活動中。Xアカウントのフォロワー数は9万人超え(2024年9月現在)
弊社SHIFT AIでは、日々の業務に的確に活用できるよう、AIツールを使いこなす人材を育成しています。
興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
\ AI人材の一歩目! /
ChatGPTの論文要約のやり方
ChatGPTの論文要約のやり方は以下のとおりです。
- ChatGPTに論文のPDFファイルをアップロードする
- プロンプトを入力する
- 送信する
- 具体的な質問や修正を行う
まずは要約したい論文のPDFファイルをChatGPTにアップロードします(GPT-4o miniモデルの場合は論文をコピーしてプロンプトと一緒に送信)。
英語の論文を用いる場合は、英語で回答される可能性があります。プロンプトの冒頭に「回答は日本語で出力してください。」と指示を加えましょう。
ChatGPTの回答に質問があったり、出力方法を修正したりする場合は、追加で指示してください。
では、論文要約に役立つプロンプトを8つ紹介します。ぜひ利用して効率的に業務を進めてください。
本記事では、J-Stage様に掲載されている以下の記事を利用させていただいています。
タイトル:日本における所得の地域間格差と人口移動の変化 : 世帯規模と年齢構成を考慮した世帯所得の推定を用いて(<特集>地域格差の経済地理学)
著者:豊田 哲也
公開年月日:2017年05月19日
ページURL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaeg/59/1/59_KJ00008685443/_article/-char/ja/
ChatGPTでの論文要約に役立つプロンプト8選
ChatGPTを使用して論文を効果的に要約するためには、適切なプロンプトを使用することが重要です。
以下に、さまざまな目的に応じた8つのプロンプト例を紹介します。
- 論文の概要を知りたい
- 研究内容をまとめたい
- 論文の結論を知りたい
- 論文の一部の章をまとめたい
- 注目したい点を指定したい
- 難しい内容をわかりやすく要約したい
- 他の論文との比較を知りたい
- 論文の応用方法を知りたい
論文の概要を知りたい
論文の全体像を把握したい場合、以下のようなプロンプトが効果的です。
この論文の概要を知るために、論文の内容を#出力形式と#出力条件に従って要約してください。
#出力形式
[研究目的]
[方法]
[結果]
[結論]
#出力条件
- 300字以内で出力する。
- 専門用語は可能な限り平易な言葉で説明してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
「#出力形式」の各項目に沿って簡潔に出力されています。資料やプレゼンの大枠や概要の作成に利用可能です。
研究内容をまとめたい
研究の詳細な内容を理解したい場合は、以下のプロンプトが有用です。
この研究の内容を理解するために、論文の内容を#出力形式と#出力条件に従って要約してください。
#出力形式
[研究背景]
[研究目的]
[方法]
[結果]
[考察]
[結論]
#出力条件
- 各項目を箇条書きにして300字以内で出力する。
- 専門用語は可能な限り平易な言葉で説明してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
箇条書きで出力するよう伝えたので、各項目が箇条書きにされ、簡潔に出力されています。資料やプレゼンの構成づくりにも役立つでしょう。
論文の結論を知りたい
論文の結論だけを素早く把握したい場合は、以下のプロンプトが効果的です。
この論文の結論を知りたいです。
論文の結論について、#出力形式と#出力条件に従って要約してください。
#出力形式
[論文の結論]
[研究からの発見]
[研究の社会的意義]
#出力条件
- 各項目を表形式にして出力する。
- 専門用語は可能な限り平易な言葉で説明してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
表形式でまとめてもらったので、論文の結論や社会的な意義が視覚的にもわかりやすくなりました。
論文の一部の章をまとめたい
論文の特定の章や節に焦点を当てたい場合は、以下のようなプロンプトが役立ちます。
この論文の『分析結果』の章を#出力条件に従って要約してください。
#出力条件
- 箇条書きで出力する。
- 研究からわかった具体的な数字も記載する。
- 非専門家でも理解できるよう噛み砕いてください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
噛み砕いた表現でわかりやすく、研究結果の具体的な数字を含んだ形になっているので、資料に組み込みやすい状態になりました。
上記のプロンプトを使う際は、1行目『分析結果』の部分を書き換えてください。
注目したい点を指定したい
論文の特定の点に注目したい場合は、以下のようなプロンプトが有効です。
この論文を要約する際に、現在の問題と今後の課題への示唆に注目してください。
#出力条件に従って要約してください。
#出力条件
- 箇条書きで出力する。
- 研究からわかった具体的な数字も記載する。
- 非専門家でも理解できるよう、わかりやすく出力してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
とくに今後の課題への示唆について、理由もあわせて出力されているので、プロジェクトの考案や改善にも役立つでしょう。
上記のプロンプトを使う際は、1行目「現在の問題と今後の課題への示唆」の部分を、注目したい箇所に書き換えてください。
難しい内容をわかりやすく要約したい
専門性の高い論文を一般向けに説明したい場合は、以下のプロンプトが効果的です。
この論文の内容を、高校生でも理解できるレベルに簡略化して要約してください。
要約する際は#出力条件に従ってください。
#出力条件
- 要約後の文字数は問いません。
- 一文ごとに改行をして見やすくしてください。
- 専門用語は可能な限り平易な言葉に置き換えてください。
- 必要に応じて簡単な例を用いて説明してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
比較的簡単な言葉で出力され、接続詞も適宜入っていることで、より理解しやすい回答になりました。プレゼン用の台本づくりに役立つでしょう。
他の論文との比較を知りたい
複数の論文を比較したい場合は、以下のようなプロンプトが役立ちます。
この論文の内容を、同じ分野の他の主要な研究と比較して要約してください。
要約は#出力形式と#出力条件に従って行ってください。
#出力形式
[類似点]
[相違点]
[この研究の独自性]
#出力条件
- 各項目を表形式にして出力する。
- 研究からわかった具体的な数字も記載する。
- 専門用語は可能な限り平易な言葉で説明してください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
他の研究や論文と比較した回答を得ることで、深掘りすべき点や課題を見つけるのに役立ちます。
論文の応用方法を知りたい
研究結果の実践的な応用方法や可能性を探りたい場合は、以下のプロンプトが有用です。
この論文の内容を要約し、実社会での応用可能性を中心に、具体的な例を挙げて説明してください。
説明は#出力条件に従って行ってください。
#出力条件
- 箇条書きで出力する。
- 研究からわかった具体的な数字も記載する。
- 高校生でも理解できるよう噛み砕いてください。
実際に上記のプロンプトを送信すると、以下のように回答されました。
研究から得られた結果をもとにした対策や応用例を挙げてくれるので、今後のプロジェクトテーマや方向性の考案に利用できます。
ChatGPTで論文要約するときの2つのコツ
ChatGPTを使って論文を効果的に要約するには、適切なプロンプトの作成が重要です。
要約の質を向上させるための2つの重要なコツを紹介します。
- 出力方法や形式を伝える
- 論文を要約する目的を伝える
それぞれ詳しく説明します。
出力方法や形式を伝える
ChatGPTで論文を要約するとき、出力方法や形式を明確に伝えることで、よりわかりやすく、見やすい状態で回答を得られます。
明確に伝えなければ、要約結果が整理されず、必要な情報を見つけにくくなるのです。
出力方法や形式の指示例と出力結果を記載するので、あなたにとっての見やすさや目的に沿って利用してください。
箇条書きで出力してほしいとき
論文の主要なポイントを5つの箇条書きで要約してください。
各項目は50字以内でまとめてください。
表形式で出力してほしいとき
論文の要約を以下の項目で表形式にして出力してください。
- 目的
- 方法
- 結果
- 結論
段落形式で出力したいとき
論文を3つの段落で要約してください。
第1段落は研究背景と目的、第2段落は方法と結果、第3段落は考察と結論を含めてください。
各段落は100字以内でまとめてください。
見出し付きで出力したいとき
論文を以下の見出しに沿って要約してください。
各セクションは80字以内でまとめてください。
- 研究背景
- 研究目的
- 方法
- 主な結果
- 考察
- 結論
論文を要約する目的を伝える
ChatGPTで論文を要約するとき、要約の目的を明確に伝えることで、より目的に沿った回答を得られます。
ChatGPTが要約の焦点を絞り、最も関連性の高い情報を抽出できるからです。
目的とズレた回答であれば、出力結果の修正を繰り返す必要があり、結果的に手間になってしまいます。
以下にプロンプト例と出力結果を記載するので、ぜひ利用してください。
プレゼン資料作成に使うため
この論文の内容をプレゼン資料に使うための要約を作成してください。
研究の背景、目的、方法、主な結果、および結論を含め、300字以内でまとめてください。
顧客向けの資料に使うため
顧客向けの資料に使うために、この論文の要点を要約を作成してください。
要約は箇条書きでわかりやすくまとめてください。
社内ディベートに使うため
社内のディベートに使うために、この論文の強みと弱みを分析して要約を作成してください。
論文の要約は以下の項目で表形式にして出力してください。
- 目的
- 方法
- 結果
- 結論
ChatGPTで論文要約するときの3つの注意点
ChatGPTを使用して論文を要約するときは、以下の3点に注意しましょう。
- 誤情報・古い情報が含まれる可能性がある
- 使用モデルで読み込ませ方が異なる
- 著作権侵害にあたる可能性がある
それぞれ詳しく説明します。
誤情報・古い情報が含まれる可能性がある
送信した論文の要約だけなら問題ありませんが、今後の実用性や他の論文・情報との比較を行う場合、誤情報や古い情報が含まれる場合があります。
ChatGPTは、ある期間までの情報を学習し、その情報をもとに回答するからです。
たとえば、GPT-4は2023年12月まで、GPT-4o・GPT-4o miniは2023年10月までのデータしか参照できません。
とくに、送信した論文以外のデータも用いて出力する場合は注意が必要です。
出力内容のすべてを真に受けず参考として使い、論文を自分の目で一読したり、他のデータや一次情報を用いてファクトチェックを行ったりしましょう。
ChatGPTが回答する誤情報・古い情報については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:Chat(チャット)GPTが嘘をつく4つの理由とは?問題になった事例も紹介
使用モデルで読み込ませ方が異なる
ChatGPTでは、使用するモデルによって論文の読み込ませ方が異なります。使用しているモデルや読み込ませ方を把握しておく必要があります。
多くの場合、ダウンロードした論文のPDFファイルを利用するでしょう。
GPT-4・GPT-4oはPDFファイルを読み込めるので、PDFファイルをアップロードし、プロンプトを送信すればようやくできます。
しかし、GPT-4o miniはファイルを読み込む機能がありません(2024年8月14日現在)。そのため、論文の文章をコピーして、テキストとしてChatGPTに送信する必要があります。
回答精度や速度を考えると、PDFファイルを送信するならGPT-4o、テキストで送信するならGPT-4o miniをおすすめします。
ChatGPTの使用モデルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【無料で使える】ChatGPT-4(GPT-4o)の特徴や活用事例、使い方を完全網羅!
関連記事:【無料】ChatGPT-4o miniとは?特徴や他モデルとの違いを解説
著作権侵害にあたる可能性がある
ChatGPTで要約した論文の使用は、用途によって著作権侵害にあたる可能性があるので注意が必要です。
ChatGPTの利用自体は商用利用可能とされていますが、ウェブ上に公開されている論文であっても著作権は保護されています。
論文の内容を私的に利用する分には問題ありません。
しかし、プレゼンや顧客向けの資料に用いる場合は、明確に出典を記載するようにし、必要に応じて著者や出版社に許可をとるようにしましょう。
ChatGPT使用の著作権問題については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【注意】ChatGPTの使用は著作権侵害リスクあり!商用利用は可能?
ChatGPTで論文要約するならGPTsも活用!
ChatGPTを利用して論文要約をする場合、GPTs(ジーピーティーズ:ChatGPTの機能を拡張し、特定の目的に特化したAIをカスタムできる機能)の利用も有効です。
とくに筆者は「Consensus(コンセンサス)」をおすすめします。
Consensusは2億件以上の膨大な論文を活用し、質問と関連性の高い情報を提供してくれます。
生成AIを活用して出力してくれるので、適切な論文から欲しい形で情報を得られるのが魅力です。
たとえば、2000年以降の日本の経済動向について質問すると、以下のような回答を得られました。
出典が明記され、内容はわかりやすく記載されています。
ほかにも、参考にする論文を探したり、その論文の内容を深掘りしたりできます。
Consensusの活用については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ChatGPTで論文要約して効率・生産性アップ!
ChatGPTを利用し、適切なプロンプトで論文要約を行えば、論文を読み込む時間や労力の削減が可能です。
ただし、出力結果を鵜呑みにするのは危険です。出力が誤情報・古い情報である場合、資料作成やプロジェクトの進行を止めてしまう可能性があります。
参考にする論文は自分でも目を通すようにしたり、他の論文やデータを確認したりしましょう。
弊社SHIFT AIでは、日々の業務に的確に活用できるよう、AI導入に役立つ情報をセミナーで定期的にお伝えしています。
「AIをどんどん活用して業務を進めていきたい」という方は、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
\ AI人材の一歩目! /