生成AIの著作権侵害事例6選!著作権侵害を回避する方法も解説
生成AIによりビジネスの効率化が期待される一方で、著作権侵害のリスクに不安を感じている方も多いでしょう。この不安を放置したままでは、生成AIの活用機会を逃し、競合他社に後れを取ってしまう可能性があります。
本記事では、生成AIの著作権侵害に関する最新の事例や、企業が取るべき具体的な対策について詳しく解説します。
この記事を読むことで、生成AIの著作権問題に関する理解を深め、自信をもって生成AIを活用できるようになるでしょう。
監修者
SHIFT AI代表 木内翔大
(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO他複数社AI顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ(会員5,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現の為に活動中。Xアカウントのフォロワー数は9万人超え(2024年9月現在)
著作権リスクを効果的に回避するには、AIリテラシーの向上が最も重要な鍵となります。
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目次
生成AIの著作権侵害事例
生成AIの著作権侵害事例について、以下の6つを紹介します。
- ニューヨーク・タイムズがOpenAIを訴訟
- Getty ImagesがStability AIを訴訟
- 中国の画像生成AIがウルトラマンを出力
- 音楽業界大手がSunoとUdioを訴訟
- NVIDIA社に対する著作者らの集団訴訟
- Databricks社とMosaicML社に対する著作者らの訴訟
それぞれの事例のすべては、AI開発会社がデータ学習元(ネット新聞や音楽)の企業から訴訟されている事例です。他社開発の生成AIを活用して著作権を侵害した事例は、2024年8月時点ではインターネット上には公表されていません。
AI開発企業の事例とはいえ、データ学習元が著作権を訴えている以上、AI開発企業が開発した生成AIを利用する企業にも影響があります。AI開発元が著作権を違反していると知らずに生成AIでコンテンツを作ると、多くの場合、そのコンテンツを作成した企業・個人が著作権を侵害したことになるためです。
そのようなリスクがあることを念頭に置き、自分には関係がないとたかを括らず、本章をご覧ください。
ニューヨーク・タイムズがOpenAIを訴訟
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2023年12月27日、OpenAIとマイクロソフトを著作権侵害で提訴しました。NYTは、両社が同社の記事を許可なく生成AIの学習用に使用し、著作権を侵害したと主張しています。
NYTによると、OpenAIとマイクロソフトの生成AIは「大量の著作権侵害をベースにした事業モデル」であり、記事の無断使用による損害は「数十億ドル(数千億円)に上る」と試算しています。
NYTは、AI開発会社がNYTのコンテンツを商用利用する場合、事前に許可を取ることが法律で義務付けられていると主張しています。なお、この訴訟の結果は、2024年8月4日時点でまだ出ていません。
この訴訟は、AI学習を巡って大手の報道機関が開発企業を訴える初めての例となり、他の報道機関やAI開発企業にも訴訟の動きが広がる可能性があります。
Getty ImagesがStability AIを訴訟
大手素材提供サイトのGetty Imagesは、Stability AIに対して著作権侵害の訴訟を提起し、AIによる画像生成技術の法的問題点を浮き彫りにしました。
Getty Imagesが訴訟を起こした理由は、Stability AIが同社の約1200万点の写真を許可や補償なく使用したと主張しているためです。Getty Imagesは、これを「驚異的な規模で堂々と侵害した」と非難しています。
たとえば、インターネット上の大量の画像データを学習しているStability AIのAI画像生成モデル「Stable Diffusion」は、その中にGetty Imagesの著作権で保護された画像が含まれていたとされています。
この訴訟は、AI開発企業が学習データの著作権に十分な注意を払う必要性を示しており、今後のAI開発における著作権の取り扱いに大きな影響を与える可能性があります。
中国の画像生成AIがウルトラマンを出力
中国の裁判所が、画像生成AIによる「ウルトラマン」に類似した画像の出力を著作権侵害と認定し、AIサービス提供者に損害賠償を命じました。
この判決が下された背景には、生成AIが生成した画像が著作権で保護された作品の特徴を明確に反映していたことがあります。広州インターネット法院は、「生成した画像はウルトラマンの独創的表現を部分的または完全に複製したもの」と判断しました。
この判決は、生成AIによる創作物であっても著作権侵害の対象となり得ることを示しており、AI開発者やサービス提供者は、学習データの選択や生成物のチェックにより慎重になる必要があることを示しています。
音楽業界大手がSunoとUdioを訴訟
ユニバーサル ミュージック グループ、ワーナーミュージック・グループ、ソニーミュージックグループなどの音楽業界大手が、音楽生成AIサービスを提供するのSunoとUdioを著作権侵害で訴えました。
この訴訟が起こされた主な理由は、SunoとUdioのAIが生成する楽曲が、著作権で保護されている既存の楽曲に非常に酷似しているという点です。音楽レーベルは、これを「甚大な規模」の著作権侵害だと主張しています。
たとえば、SunoやUdioでは、ユーザーの指示に基づいて特定のアーティストのスタイルを模倣した楽曲を生成できます。そのため、学習の過程で著作権で保護された楽曲の要素が使用されている可能性があるのです。
この訴訟は、音楽業界におけるAI技術の利用と著作権保護のバランスをどのように取るべきかという重要な問題を提起しており、今後のAI音楽生成技術の発展に大きな影響を与える可能性があります。
NVIDIA社に対する著作者らの集団訴訟
半導体ベンダー大手のNVIDIAの対話型AI開発支援サービス「NeMo」の開発に、自身の著書のデータが許可なく使用しているとして、作家らによって集団訴訟が起こされました。NVIDIAは、19万冊を超える本のデータを使用していたとされています。
たとえば、NVIDIAのAIモデルは、これらの書籍データを学習することで、人間のような自然な文章を生成する能力を獲得しています。しかし、その過程で著作権で保護された作品が無断で使用されていた可能性があります。
この訴訟は、AI開発企業が学習データの選択と使用に関してより慎重になる必要性を示しており、著作者の権利保護とAI技術の発展のバランスをどのように取るべきかという課題を提起しています。
Databricks社とMosaicML社に対する著作者らの訴訟
2024年3月8日、作家グループがビッグデータ分析企業であるDatabricks社とMosaicML社(Databricksの子会社)を著作権侵害で提訴しました。
訴訟では、両社の大規模言語モデルが「Books3」と呼ばれる海賊版電子書籍のライブラリを使用して訓練されたと主張してされています。
本章で紹介した事例は、生成AIの発展に伴い、著作権保護と技術革新のバランスをどのように取るべきかという重要な問題を提起しています。今後の判決や法整備の動向が、AIと著作権の関係性に大きな影響を与えると考えられます。
生成AIのコンテンツには著作権が認められる?
文化庁によると、生成AIによって作成したコンテンツに、以下に解説する「創作意図」と「創作的寄与」があるかどうかで、著作権の付与が決定するとされています。
項目 | 説明 |
---|---|
創作意図 | 思想又は感情を、ある結果物として表現しようとする意図 |
創作的寄与 | AIが生成したものに対し、思考作度や加筆・修正を行うこと |
とくに、創作的寄与が重要であるとされています。
たとえば以下のケースでは、著作権が認められる可能性が高いです。
- プロンプトを極めて詳細に記述して作成している場合
- 生成・修正・加筆を何度も行っている場合
- 自分のコンテンツを生成AIで出力する場合
一方で、生成AIの設定(パラメーター)を操作するだけでは、著作権は認められにくいとされます。
ビジネスを行う上で、コンテンツの著作権の有無は非常に重要です。生成AIを扱う際には、自社のコンテンツへ著作権が認められるかどうかも重視してみてください。
生成AIの著作権リスクに関しては、以下の記事で網羅的に解説しています。
生成AIが作った画像・文章は著作権を侵害する可能性あり!回避する方法も解説
生成AIで作ったコンテンツは、著作権を侵害する可能性をもっています。著作権を意識せず生成AIを使うことで、思わぬ損失を被ってしまう場合があります。本記事では、生成AIと著作権の関係について詳しく解説しています。
企業で生成AIを使う際に著作権を侵害しないためのポイント
AI開発企業が訴訟される事例ばかりですが、前述したように著作物を学習した生成AIを使うと、使用者が著作権侵害で訴えられる可能性があります。
そのリスクを回避するためには、以下5つの対策が有効です。
- 著作権侵害のリスクのない生成AIを使う
- 人間によるチェックを必ず行う
- 専門家のチェックを行う
- 社内ルール・マニュアルの作成
- 社員のAIリテラシーを高める
それぞれの対策の詳細を確認して、自社での生成AI活用リスクを限りなくゼロに抑えましょう。
著作権侵害のリスクのない生成AIを使う
学習データが著作権フリーであり、著作権侵害リスクのない生成AIツールを使用することがおすすめです。著作権を侵害する原因は、生成AIが著作物を学習していることが多いためです。
たとえば、Adobe社の画像生成AI「Adobe Firefly」は著作権の心配がないデータのみを学習しているため、安心して商用利用できます。
Adobe社の公式サイトでも、AIが学習したデータは著作権の心配がないもののみであると明言されています。
このような著作権侵害のリスクが低い生成AIを選択することで、企業は法的トラブルを回避しつつ、生成AIによる業務効率化が望めます。ただし、完全にリスクがないわけではないため、他の対策と組み合わせて使用することが重要です。
以下の記事では学習データの著作権について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:AIに使う学習データは著作権を侵害する?最新の著作権法をもとに解説
人間によるチェックを必ず行う
生成AIの出力をそのまま使用すると著作権侵害のリスクがあるため、人間が必ずチェックする必要があります。生成AIが生成した画像や文章は、既存の著作物と類似している可能性があるからです。
人間によるチェックでは、以下の点に注意を払うことが重要です。
- 既知の著作物との類似性
- 商標やロゴの不適切な使用
- 個人情報やプライバシーの侵害
- 不適切な表現や偏見
生成AI開発企業大手のGoogleやOpenAIでも、人間による最終確認は必須であると明言しています。
人間によるチェックを行うことで、生成AIが見落としがちな微妙な問題点を発見し、修正できます。必ず人間によるチェックを行い、著作権侵害のリスクを大幅に低減させましょう。
専門家のチェックを行う
法律の専門家や著作権に詳しい専門家にチェックを依頼することで、一般の社員では気づきにくい潜在的な問題を発見できます。
専門家によるチェックの利点は以下のとおりです。
- 法的観点からの詳細な分析
- 業界特有の著作権問題への対応
- 最新の法改正や判例の反映
- リスク評価と対策の提案
専門家のチェックを定期的に行うことで、企業は著作権侵害のリスクを最小限に抑えられます。ただし、専門家によるチェックにはコストがかかるため、企業の規模や生成AIの使用頻度に応じて、適切な頻度で依頼することが重要です。
社内ルール・マニュアルの作成
社内で生成AIの活用に関するルールやマニュアルを作成することで、社員によるヒューマンエラーを減らせます。明確なガイドラインを設けることで、社員が生成AIを使用する際の判断基準が統一され、リスクの低減につながります。
効果的な社内ルール・マニュアルには、以下の要素を含めるとよいでしょう。
- 使用可能な生成AIツールのリスト
- 著作権チェックの手順と基準
- 問題が発生した場合の報告フロー
- 定期的な研修や更新の実施計画
社内ルール・マニュアルを作成し、全社員に周知徹底することで、組織全体の著作権意識を高め、リスクを軽減できます。また、定期的に見直しを行い、最新の法律や技術の変化に対応することも重要です。
社員のAIリテラシーを高める
実際に生成AIを使用する社員のリテラシーを高めることが、著作権侵害リスクを下げる有効な手段です。
AIリテラシー向上のための施策には以下のようなものがあります。
- 定期的な研修やワークショップの実施
- eラーニングコンテンツの提供
- 社内での事例共有や情報交換の促進
- 外部専門家による講演会の開催
社員のAIリテラシーを高めることで、生成AIの出力に対する批判的思考が養われ、問題を早期に発見できるようになります。
また、AIの適切な使用方法や著作権に関する知識が深まることで、組織全体のリスク管理能力が向上します。これらの対策を総合的に実施することで、企業は生成AIの利点を最大限に活用しつつ、著作権侵害のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
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生成AIの著作権に関するよくある質問
生成AIの著作権について、よくある質問を2つまとめました。
回答を確認して、自社で生成AIを活用する際の参考にしてみてください。
AIイラストは著作権を侵害することはありますか?
AIイラストが著作権を侵害する可能性は確かにあります。著作権侵害の成立には、「類似性」と「依拠性」という2つの要件を満たす必要があります。
AIイラストが著作権侵害となる可能性がある主なケースは以下の通りです。
- 既存の著作物と明らかに類似したイラストをAIに生成させた場合
- 著作権で保護された画像をAIに直接加工・編集させた場合
- 生成AIの学習データに使用された著作物の特徴を強く反映したイラストが生成された場合
ただし、単に生成AIが機械学習で著作物を学習したという事実だけでは、必ずしも著作権侵害とはなりません。
生成されたAIイラストが既存の著作物の創作的表現と類似しており、かつその著作物に依拠していると判断される場合に、著作権侵害の問題が生じる可能性があります。
生成AIによる著作権侵害で身近な例は?
生成AIによる著作権侵害の身近な例としては、以下のようなケースが考えられます。
シチュエーション | 内容 |
---|---|
SNSへの投稿 | AIで生成した画像や文章をSNSに投稿したところ、既存の著作物と酷似していたため、著作権侵害として指摘される。 |
商用利用 | 企業のウェブサイトやパンフレットにAI生成画像を使用したが、有名なアーティストの作品と類似していたため、法的問題に発展する。 |
音楽制作 | AIを使って作曲した楽曲が、既存の人気曲と似ていると指摘され、著作権侵害の疑いがかけられる。 |
小説執筆 | AIを活用して執筆した小説のプロットや表現が、既存の著作物と酷似していると指摘される。 |
ロゴデザイン | 企業ロゴをAIで生成したところ、他社の商標と類似していたため、商標権侵害の問題が生じる。 |
これらの例は、AIが生成したコンテンツが意図せず既存の著作物に類似してしまう可能性を示しています。そのため、AI生成物を利用する際は、既存の著作物との類似性を慎重に確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
生成AI利用で著作権を侵害しないように対策しよう
本記事で紹介したように、著作物を学習したことによる訴訟が後を立ちません。そして、著作物を学習した生成AIを使うことで、使用者が著作権侵害で訴訟されるリスクがあります。
したがって、それを利用する私たちは、著作権侵害について深く理解しておく必要があります。本記事で紹介した著作権侵害リスクを抑える施策を参考にして、安心・安全に生成AIの能力を最大限に活かしましょう。
著作権リスクを回避するには、実際に生成AIを扱う社員の教育が必要不可欠です。
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