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  • 生成AI活用

【2024年版】中国の生成AI事情を徹底解説!日本人が知らない急成長の秘密とは

中国の生成AI開発は、私たちの想像よりもずっと先を進んでいます。

中国では国内使用に特化した生成AIが多数開発されており、さまざまな中華系企業で活用されていることを、日本人の多くは知りません。

本記事では、日本ではあまり耳にしない中国の生成AI事情について、詳しく解説しています。

ChatGPTやGeminiなどの世界的に有名な生成AIだけでなく、隣国の事情も覗いてみましょう。

監修者

SHIFT AI代表 木内翔大

(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO AI & Web3株式会社AI活用顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ SHIFT AI(会員1万人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現のために活動中。Xアカウントのフォロワー数は10万人超え(2025年1月現在)

中国の生成AI開発の急速な進歩は、多くの日本企業にとって驚きであり、同時に刺激ともなるでしょう。自社のAI戦略を検討する上で、グローバルな視点をもつことは非常に重要です。

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中国の生成AI産業は急成長している

中国の生成AI産業に関するニュースはあまり報道されませんが、実はアメリカに匹敵する規模を誇っています。

本章では、中国の生成AI産業について詳しく解説します。

生成AI関連特許の出願数は世界一

2022年における生成AI関連特許出願数は、中国が3万124件と、2位の米国1万2,530件を大幅に引き離して世界トップでした。

参考:中国が出願数で圧倒 日本は韓・欧に及ばず(日経XTECH)

日経XTECHのレポートを参考に作成した「国別生成AI関連特許出願数」のグラフ。中国が圧倒的に多い。
日経XTECHのレポートを参考に作成

このことから、中国が世界的に生成AIの開発に注力していることがわかります。

特許出願数が多いのはビッグテック企業である、百度(バイドゥ)や騰訊控股(テンセント)です。これら企業は中国国内のクラウドサービスや検索エンジンなどのシェア率が高いことから、生成AI開発において世界的に見てもリードしています。

日本であまり聞くことがない中国の生成AI開発は、意外にも米国以上に急成長しているのです。

画像・動画分野に注力している傾向

中国の特許出願を分類してみると、画像・動画生成分野での出願数が多いことから、中国は画像・動画生成において世界でリードしようとしている傾向があると見て取れます。

2024年6月には、快手(クアイショウ)がKling(クリング)という動画生成AIをリリースしています。Klingは、OpenAIの動画生成AI「Sora」に匹敵するほどのクオリティで動画を生成できるだけでなく、一般にもリリースされている点で話題になりました。

今後も、中国は画像・動画生成分野で注目を集めるプロダクトをリリースすることが予想できます。

民間投資額は世界2位

特許出願数の他に注目すべきは、生成AI分野への民間投資額が世界で2位という点です。

スタンフォード大学の「AIインデックスレポート2024」によれば、2023年の民間投資額はアメリカが1位で672.2億ドル、2位中国が77.6億ドルです。

スタンフォード大学「AIインデックスレポート2024」のグラフ

アメリカの投資額が飛び抜けているものの、中国も他国と比べて非常に高い投資額です。

このことからも、中国が生成AI開発に積極的であることがうかがえます。

今後も投資が続けば、世界的に注目される生成AIが誕生することが期待されます。

中国の生成AIは3つのタイプに分けられる

野村総合研究所の李氏によれば、急成長中の中国の生成AIは以下3つの分類に分けられるといいます。

  • エコシステム構築型
  • インフラ建設型
  • 業界特化型

それぞれの特徴を詳しく見てみましょう。

エコシステム構築型

一つ目は、自社が展開するサービス(エコシステム)の中に生成AIを組み込む「エコシステム構築型」と呼ばれるタイプです。

たとえば、バイドゥなら検索エンジンやビジネスアプリ、アリババならECや広告などのサービスに生成AIを組み込むことを指します。

Googleが自社サービスにGeminiを組み込もうとしているのと似たタイプだと考えるとよいでしょう。

自社サービスの中で自由に生成AIを組み込めるため、柔軟性高く実装できる点が特徴です。

インフラ建設型

二つ目は、AIモデルやプラットフォームを開発者向けに提供する「インフラ建設型」と呼ばれるタイプです。

たとえば、北京智源人工知能研究員(BAAI)が開発したAIモデル「悟道」は、OpenAIのGPT-3.5を超える1.75兆のパラメーターをもち、多くの中国企業が利用しています。

このように、企業向けにAIモデルを提供するビジネスモデルがインフラ構築型とされています。

業界特化型

3つ目は、特定の分野に特化したAIモデルを提供する「業界特化型」と呼ばれるタイプです。

たとえば、医療や教育、建設業など、その分野に特化した生成AIを提供します。

インフラ建設型の大規模なパラメーターをもつモデルには性能で敵わないものの、特化させることで開発コストや利用コストを低減できるメリットがあります。

中国はこの業界特化型と、前述した2つのタイプをメインとして開発を進め、今では世界を代表する生成AI大国になっているのです。

中国の主要な生成AIを紹介

中国の主要な生成AIを紹介します。(開発元:生成AIの名前)

  • バイドゥ:文心一言
  • アリババ:通義千問
  • クアイショウ:Kling
  • テンセント:混元
  • BAAI:悟道

中には日本で使用できるものもあるため、確認してみましょう。

バイドゥ:文心一言

中国の検索大手バイドゥが開発した生成AI「文心一言(アーニーボット)」は、中国語の自然言語処理において高い能力をもちます。

とくに、最新モデルのアーニー4.0は、中国語能力に関する性能がChatGPTを超えていると発表されました。

文心一言は、GPTと同じように膨大なデータを学習しているため、文章作成や問題解決、マルチモーダル生成などの幅広いタスクをこなせます。

文心一言はChatGPTに匹敵する性能と中国語特有の言語処理能力を兼ね備えた強力な生成AIであり、中国におけるAI活用の発展を牽引していくと期待されています。

アリババ:通義千問

アリババグループが開発した「通義千問(トンイー・チェンウェン)」は、回答の柔軟性と幅広い知識ベースにより、ビジネスや研究分野で高い評価を得ている生成AIです。

このAIモデルは、自然言語処理、数学的推論、コード生成など、多岐にわたる能力をもち、ユーザーの複雑な要求に対して的確な回答を提供できます。

通義千問が注目される主な理由は、高度な文脈理解能力と豊富な知識ベースです。アリババの巨大なeコマースプラットフォームから得られる膨大なデータと、高度な機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、ユーザーの意図を正確に把握し、関連性の高い情報を提供できます。

通義千問は中小企業から大企業まで、幅広い規模の組織がAI技術を活用できるように設計されています。こうした特徴から、通義千問は中国の市場を牽引する重要な存在となっているのです。

クアイショウ:Kling

https://twitter.com/shota7180/status/1798835214355247298

「Kling(クリング)」は、中国のテクノロジー企業「快手(クアイショウ)」が開発したテキストから動画を生成するAIモデルで、クオリティはOpenAIの「Sora」に匹敵するといわれています。

たとえば、1080pの高画質な動画を2分尺で作成でき、1秒間に30枚のフレーム数を含むことで、非常に滑らかでリアルな動きを実現しています。

Klingはテキスト入力のみで動画生成が可能であるため、手軽に高品質な動画コンテンツを作成できます。そのため、SNSでのコンテンツ作成や広告動画制作など、さまざまな分野での活用が期待されています。

なお、現在日本でも一部ユーザーが使用できるようになっています。

Klingは高画質でリアルな動画を手軽に生成できるため、コンテンツ制作の幅を広げ、さまざまな分野で活用が期待されるAIモデルです。

テンセント:混元

テンセントが開発した「混元」は、1000億以上のパラメーターをもち、2兆以上のトークンで事前学習されています。

混元は、中国語の言語処理、高度な論理的推論、信頼性のあるタスク実行に優れ、ビジネスとIT業界向けに特化して開発されたAIモデルです。

2023年9月に企業向けに公開され、画像生成やコピーライティング、テキスト認識などの応用が可能になりました。混元は、今後さらに多くの業界で応用されていくと考えられています。

BAAI:悟道

BAAIの「悟道」は、中国初の大規模なマルチモーダルAIモデル※です。
※:テキスト、画像、音声、動画など複数のメディアを処理できるAIモデル

中でも「悟道2.0」は1.75兆という膨大なパラメーターをもち、多様なタスクに対応できるため、研究開発やコンテンツ制作、医療など、幅広い分野での活用が期待されています。

また、悟道は4.9TBの画像とテキストデータで学習した汎用的なマルチモーダルAIで、顔認識、要約、創作、画像キャプション生成などさまざまなタスクを実行できます。

テキスト以外にも強みをもつため、幅広い分野での活用できるAIモデルといえるでしょう。

中国の生成AI開発・研究の現状

中国の生成AI開発の現状について解説します。

日本国内だとあまり耳にしない情報も含まれるため、ぜひ確認してみてください。

ChatGPTを国内で利用不可にしている

中国では、政治的に敏感な内容や、中国政府に批判的な情報をChatGPTが生成する可能性があるため、国内では利用不可としています。

この規制により、中国のユーザーはChatGPTのような最新の生成AI技術にアクセスできないため、中国は国内産の生成AI開発を余儀なくされている状況です。

このように、中国政府のインターネット検閲は、国内の生成AI開発に影響を与え、海外との技術格差を生む可能性があります。

一方で中国の生成AI分野への投資は大規模であり、今後の開発状況に注目が集まっています。

半導体やGPUは世界中から輸出を規制されている

アメリカを中心とした西側諸国が、中国の軍事技術発展への懸念から、半導体やGPUなど先端技術の輸出を規制しています。

たとえば、高性能なGPUはAI開発に不可欠ですが、軍事利用される可能性があるため、中国への輸出が制限されています。

この規制により、中国はAI開発に必要なハードウェアを確保することが困難になり、開発速度が遅れる可能性があります。

このように、半導体やGPUの輸出規制は、中国の生成AI開発を阻害し、国際競争における不利な状況を生み出す可能性があります。

輸出制限がありつつも開発は進んでいるのはなぜ?

中国は先端技術の輸出規制がありつつも生成AI関連の開発が進んでいるのは、主に以下の理由が考えられます。

  1. 比較的古い世代の半導体の製造装置なら輸入できた
  2. 規制発表直後から規制施行開始までの間に大量輸入を行った

上記2点に莫大な投資が加わり、規制下でありつつも開発が進んだ可能性があります。

文心一言や悟道のような高性能生成AIを開発したり、極小の半導体チップを埋め込んだスマホ「Mete60 Pro」などをリリースしたりしていることからも、開発が進んでいることは明白です。

中国は規制の抜け道をうまく突いて、生成AI開発を進めていると考えられます。

【2024年最新】中国のAI関連ニュース

中国のAI関連ニュースを3つ紹介します。

  • AIで死者のデータを再現する技術を開発
  • リアルな人型ロボットを開発
  • 医療分野のAI化が進展

驚きの開発の数々を確認してみてください。

AIで死者のデータを再現する技術を開発

中国では生成AIを使って亡くなった人を「復活」させるビジネスが登場し、論争を呼んでいます。

生成AI技術の急速な進化により、故人のデータを元に対話や画像・動画・音声生成が可能になりました。遺族がサービスを活用すれば、まるで故人が生き返ったかのように会話ができるといいます。

このビジネスは「冒とく」と「心の救済」の二つの観点から議論されています。倫理的な問題や心理的影響について、今後さらなる議論が予想されます。

リアルな人型ロボットを開発

中国のEx-Robotsが、人間らしい表情や感情表現が可能な人型ロボットを開発しています。

AIと表情認識技術の進歩により、より自然な人間とロボットのやりとりが可能になりました。顔の細かな動きを模倣するモーターを頭部に搭載し、人間の表情や動きをリアルタイムで再現できます。

心理カウンセリングや健康管理、子供向けサービスなど、感情が必要なやりとりが重要な分野での活用が期待されています。

参考:China’s Ex-Robots develops humanoids with enhanced facial movement(ロイター)

医療分野のAI化が進展

中国では、医療画像AI技術の開発が実地検証まで完了し、医療サービスの効率と診断レベル向上が進んでいます。

また大規模言語モデルの登場により、AIと医療の融合がさらに加速し、新たな医療製品やサービスの開発が進むと予想されます。

この進展により、遠隔医療の普及が加速し、農村部でも高度な診断が可能になると考えられています。

また、個別化医療の進展や医療現場の効率化が期待されます。新薬開発も加速するでしょう。

医療分野のAI化が進展すれば、中国の医療水準が向上し、平均寿命の延伸や医療格差の縮小につながると予想されます。

中国の生成AI開発の動向は今後も要チェック!

日本であまり報道されない中国の生成AI開発は、私たちが想像しているよりも進んでいます。

知らず知らずのうちに、日本国内でも中華系生成AIが使われていても不思議ではありません。

今後も中国は世の中を驚かせる生成AIを開発するでしょう。

私たちの生活に無関係とはいえない中国の生成AI事情から、今後も目が離せません。

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記事を書いた人

SHIFT AI TIMES編集長

大城一輝

フリーランスとしてライター、ディレクター、生成AIコンサルタントとして活動している。AI活用の講師も多数経験。
SHIFT AIではオウンドメディア(SHIFT AI TIMES)の編集長を担当。
また、SHIFT AIのモデレーターとしてコミュニティ運営や講師にも携わっている。
G検定・生成AIパスポート・Generative AI Test合格
Google AI Essentials修了
ノーコード生成AIツール「Create.xyz」公式アンバサダー
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