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  • 生成AI活用

【一目でわかる】RAGとファインチューニングの違いとは?活用事例も紹介

RAGとファインチューニングは、機械学習や自然言語処理における重要な手法です。

主な違いは、RAGが情報検索を直接的に統合することである一方、ファインチューニングはモデル自体の内部パラメーターを調整することにより、既存の知識を新しいタスクやデータセットに適用する点です。

つまり、両者は「生成AIにデータを学習させているか・いないか」という点が大きな違いです。

それぞれの特徴を十分に理解することで、生成AI導入時に、用途に応じて適切な使い分けが可能となります。

本記事では、RAGとファインチューニングの具体的な違い、メリット・デメリット、適用方法について詳しく解説します。

RAGとファインチューニングの違いを理解し、生成AI導入の効果を最大化させましょう。

監修者

SHIFT AI代表 木内翔大

(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO AI & Web3株式会社AI活用顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ SHIFT AI(会員1万人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現のために活動中。Xアカウントのフォロワー数は10万人超え(2025年1月現在)

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RAGとファインチューニングの違いを一覧化

RAGとファインチューニングの違いを以下にまとめてみます。

項目RAGファインチューニング
学習データ既存の知識ベース
(データベース、ドキュメントなど)
事前に用意した教師データ
(質問と回答のペア、文章の要約など)
学習方法知識ベースから情報を取得し、その情報を基に回答を生成教師データを用いて
モデルのパラメータを調整し、特定タスクに特化
メリット・最新の情報に基づいた回答が可能
・知識ベースの更新が容易
・学習コストが低い
・特定タスクへの高い精度
・プロンプトエンジニアリングの必要性が低い
デメリット・知識ベースに依存
・回答の正確性が知識ベースの品質に左右される
・複雑な質問への対応が難しい
・事前に教師データの準備が必要
・学習コストが高い
・過学習のリスク
活用例・チャットボット
・FAQシステム
・質問応答システム
・文章生成
・翻訳
・感情分析
・文章分類 など
必要な資源・大規模な知識ベース
・検索エンジン
・大量の教師データ
・高性能な計算資源

それぞれの違いについて、詳しくみてみましょう。

RAGは外部情報と統合する手法

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、外部情報を活用してテキスト生成を行う手法です。RAGの最大の特徴は、モデルが外部の知識ベースやデータベースから情報を取得し、統合して応答を生成する点です。

たとえば、質問応答システムにおいてRAGを用いると、外部の文献やデータベースから関連情報を引き出し、情報にもとづいて正確かつ詳細な回答を生成できます。

これにより、RAGはリアルタイムで最新かつ正確な情報を反映するので、信頼性の高い情報が求められるケースでとくに有効です。

生成AIのRAGについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:生成AIのRAG(検索拡張生成)とは?ファインチューニングとの違いも解説

ファインチューニングは内部パラメーターを調整する手法

ファインチューニングは、既存のモデルの内部パラメーター※を調整することによって、特定のタスクに最適化する手法です。
※入力データの変換と出力に影響を与える数値

ファインチューニングの主な利点は、既存の大規模なAIモデルを基盤として、追加のデータセットを用いて再学習することです。特定のニーズに応じた高精度なモデルを短期間で作成できます。

たとえば、自然言語処理におけるチャットボットの開発において、ファインチューニングを用いることで、特定の企業や業界の用語や文脈に対応したモデルを構築できます。

ファインチューニングは、既存モデルの能力を活用しつつ、特定のタスクに適した性能を発揮するための手法です。

RAGとファインチューニングのメリット・デメリット

RAG vs Fine Tuningと書かれた壁

RAGとファインチューニングのメリットとデメリットを解説します。

双方の手法が有するメリットとデメリットを深く理解し、上手に活用してください。

RAGのメリット・デメリット

RAGのメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
最新情報の反映
RAGは外部の知識ベースやデータベースからリアルタイムで情報を取得するため、最新の情報に応答し反映する。
実装の複雑さ
外部データベースとの連携や情報検索の仕組みを構築するため、システムの設計が複雑。
高精度な回答
外部情報を統合することで、モデル単独では難しい詳細な回答が可能。
レスポンス時間
情報検索を行うため、応答生成に時間を要することがある。リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、レスポンス時間が問題となる。
柔軟性
幅広い情報源から必要なデータを取得でき、多様な質問や要求に対応できる。
データの質依存
外部データの質や信頼性に依存するため、不正確な情報を取得するリスクがある。

RAGは高精度な回答と柔軟性を提供しますが、実装の複雑さやレスポンス時間の問題があるうえ、外部データの質に依存します。

しかし、効果的に活用することで専門的な回答を出力させたり、嘘を出力することを減少させられたりします。

ファインチューニングのメリット・デメリット

ファインチューニングのメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
カスタマイズ性
特定の業界やタスクに合わせてモデルをカスタマイズでき、精度の高い応答が期待できる。
データの偏り
使用するデータセットが偏っていると、モデルもデータの偏りを学習してしまう。
効率的トレーニング済みモデルを活用するため、少ないリソースで高性能なモデルを実現できる。過学習のリスク
特定のデータに過剰に適応してしまうことで、他のデータセットに対する汎用性が低下する。
高精度
特定のデータセットに対して訓練することで、汎用モデルよりも精度の高い結果を得られる。
リソースの必要性
適切な訓練データと計算リソースが必要となるため、準備とコストがかかる。

ファインチューニングは高精度な応答を提供する一方で、データの偏りや過学習のリスクがあります。

カスタマイズ性により特定の業界やタスクに適したモデルを作成でき、効率的に高性能を実現できますが、適切な訓練データとリソースが必要です。

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RAGとファインチューニングの用途の違い

RAGを使ったチャットボットのイラスト

RAGとファインチューニングの使用用途の違いをお伝えします。

  • RAGが有効なケース
  • ファインチューニングが有効なケース

それぞれの有効なケースを理解しましょう。

RAGが有効なケース

RAGは広範な知識が必要なケースや、迅速な情報提供が求められる状況でとくに有効です。

たとえば、株式会社クレディセゾンでは社内情報回答チャットボット「アシストくん」にRAGを実装し、社内FAQシステムと生成AIを連携させています。

これにより、社員の問い合わせに対して最新の規定や業務手順を即座に提供しています。

クレディセゾンの事例のように、社内の独自情報を生成AIに参照させ、業務をスムーズに進めるケースでは、RAGはとくに有効な手段です。

ファインチューニングが有効なケース

ファインチューニングの有効なケースを3つ紹介します。

ケース説明
特定の業界や専門分野に特化した応答専門知識が必要な場合(医療分野など)に、分野に特化したモデルを構築できる
企業固有のニーズへの対応企業のカスタマーサポートにおいて、企業固有の製品情報やサービスに特化した応答が可能
特定の言語や文化に対応特定の言語や文化に適応したモデルを構築できる

ファインチューニングは、特定の業界や専門分野、企業固有のニーズ、特定の言語や文化に特化した応答を提供する際に非常に有効です。

医療や法律などの専門知識が必要な場合や、企業のカスタマーサポート、多言語対応のチャットボットなどに最適でしょう。

RAGとファインチューニングはどうやって行う?

RAGとファインチューニング実装の手順を説明します。

  • RAGの手順
  • ファインチューニングの手順

それぞれの実装手順について、詳しく理解しましょう。

RAGの実装手順

RAGの実装手順は以下の6ステップです。

実装手順説明
1. 情報源の選択質問に答えるための情報源となるデータベースの選択。たとえば、企業の製品マニュアルや過去の問い合わせ記録などの使用。
2. 質問の数値化ユーザーからの質問や指示を、コンピューターが理解しやすい数値の並び(ベクトル)に変換するシステムの用意。質問とデータベース内の情報の比較が容易に。
3. 関連情報の検索質問に対して、選んだデータベースから関連性の高い情報を見つけ出すシステムの作成。質問のベクトルと似たベクトルを持つ情報の探索により、役立つ情報の効率的な収集。
4. 回答の生成集めた関連情報を元に、質問に対する最適な回答を作り出すシステムの設計。自然な文章での的確な質問への回答の実現。
5. 性能の確認と改善実際のシステム使用による回答の質や速度などの性能確認。問題があれば、各部分の設定の調整と改善。
6. 継続的な改良システムの運用と並行した定期的な性能チェックと改良の継続。新しい情報のデータベースへの追加やユーザーの反応を基にしたシステムの改良が重要。

RAGを実装することで、最新かつ信頼性の高い情報にアクセスしやすくなり、生成AIの回答の質を向上できます。

ただし、RAGの実装には専門的な知識・スキルが必要になる場合が多くあります。

ファインチューニングの手順

ファインチューニングの手順は以下の7ステップです。

今回紹介するのは、OpenAIのAPI※を使用してファインチューニングを行う手順です。
※異なるソフトウェア同士を連携させる仕組み。

手順説明
1.OpenAI APIキーを取得OpenAIの公式サイトからAPIキーを取得。APIキーはファインチューニングのための認証に必要。
2.ファインチューニングの作業環境を準備作業環境を整え、必要なソフトウェアやツールをインストールする。
3.トレーニングデータを準備ファインチューニングに使用するデータを収集し、整理する。特定のタスクに関する例文や回答データを用意する。
4.トレーニングデータのフォーマットをチェックトレーニングデータが適切なフォーマットであることを確認する。データの形式や内容の一貫性が含まれる。
5.データをアップロードし、モデルをファインチューニング準備したデータをOpenAIのプラットフォームにアップロードし、モデルをファインチューニングする。
6.ファインチューニングの進捗状況を確認ファインチューニングの進捗をモニタリングし、必要に応じて調整を行う。
7.新しいモデルをテストファインチューニングが完了したモデルをテストし、性能を評価する。実際の使用シナリオで期待通りの結果が得られるか確認する。

RAGやファインチューニングを行うには、専門的な知識・スキルが必要です。

自社でRAGやファインチューニングを行う生成AI導入が難しい場合は、導入支援を行っている外部組織に依頼するとよいでしょう。

RAGとファインチューニングについてよくある質問

ここからはRAGとファインチューニングについてよくある質問にお答えします。

  • ChatGPTのファインチューニングはどのように行われていますか?
  • ファインチューニングとプロンプトエンジニアリングの違いは何ですか?

質問に対する回答を確認して、生成AI導入時の参考にしてみてください。

ChatGPTのファインチューニングはどのように行われていますか?

ChatGPTのファインチューニング※は、「教師あり学習」「報酬モデルの学習」「強化学習」の3つのステップで行われています。
※厳密にはChatGPTの内部で動いているGPTのファインチューニング

なお、GPTのファインチューニングは、事前にインターネット上の膨大な情報で学習した後、ユーザーに危害や不快感を与えないために行われます。

ファインチューニングの手順は以下のとおりです。

手順名説明
教師あり学習人間が質問と回答のセットを作成し、GPTに学習させる。インターネットの情報だけでは学べない内容や、正しい回答を学び直す。
報酬モデルの作成GPTの教師役となる報酬モデルを作成。人間がGPTの出力にスコアをつけ、報酬モデルが「いい回答」を学習する。
強化学習報酬モデルを使用してGPTの応答を改善。GPTが出力した回答を報酬モデルが評価し、フィードバックをGPTが学習する。

こうしてファインチューニングされたGPTを、さらにユーザー向けに調整したのが、ChatGPTという生成AIサービスです。

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ファインチューニングとプロンプトエンジニアリングの違いはなんですか?

ファインチューニングとプロンプトエンジニアリングの違いを以下に示します。

比較項目ファインチューニングプロンプトエンジニアリング
定義既存のモデルを特定のタスクに最適化するために再トレーニングすることモデルに与える入力(プロンプト)を工夫することで出力を改善すること
目標特定のタスクや用途に応じてモデルの性能を向上させる望ましい出力を得るためにプロンプトを調整する
実行方法新しいデータセットを用いてモデルの内部パラメーターを調整するプロンプトの設計や形式を最適化する
必要なデータ特定のタスクに関連するデータ特定のデータは不要、プロンプトの調整だけで済む
時間とコスト再トレーニングに時間と計算リソースが必要比較的低コストで迅速に実行できる
適用範囲特定のタスクや業界に対して適用幅広いタスクに対して柔軟に適用可能

ファインチューニングは、モデル自体を再トレーニングして特定のタスクに最適化する手法であり、特定のデータセットと時間を必要とします。

一方、プロンプトエンジニアリングは、入力の工夫によってモデルの出力を改善する手法であり、迅速かつ低コストで実行できます。

RAGとファインチューニングの違いを理解して適切に使い分けよう

RAGとファインチューニングを適切に使い分けることで、生成AI導入の効果を最大限に活用できます。

RAGはリアルタイムで最新情報を反映し、広範な知識が必要な場合に有効です。一方、ファインチューニングは特定の業界や専門分野に特化した高精度な応答を提供します。

本記事で学んだ内容を活かして、自社のAIシステムを効果的に構築し、企業の競争力を高めましょう。

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記事を書いた人

SHIFT AI編集部

日本最大のAIコミュニティ「SHIFT AI」編集部です!

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