各国で画像生成AIへの規制が進行中!規制理由や著作権について解説
画像生成AIをめぐる規制に不安を感じている人が増えています。
「これって違法なの?」「トラブルに巻き込まれないだろうか」という心配が尽きないでしょう。
この不安を放っておくと、せっかくの新しい技術から取り残されて、結果的に周囲からおくれをとってしまうリスクがあります。
本記事では、AIをめぐる各国の規制状況や規制の理由、著作権の問題について解説します。
読み終わった後には、AIについて自信を持って使いこなせるスマートなユーザーになれるでしょう。
監修者
SHIFT AI代表 木内翔大
(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO他複数社AI顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ(会員9,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現の為に活動中。Xアカウントのフォロワー数は9.7万人超え(2024年12月現在)
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目次
各国の画像生成AIへの規制
世界各国で画像生成AIへの規制が進んでいます。本記事では、以下4つの地域でなされている規制について解説します。
- EU(欧州連合)
- 米国
- 中国
- 日本
各国の規制やその背景などを理解し、技術の革新にともなった問題や未来を考えるきっかけにしてみてください。
EU(欧州連合)
EU(欧州連合)は世界でもっとも厳格かつ包括的なAI規制を推進している地域です。
2024年3月に欧州議会で承認された「AI法(Artificial Intelligence Act、通称はAI Act)」は、画像生成AIに対して前例のない詳細な規制枠組みを提供しています。
この方は、AIが生成する画像における個人のプライバシーや人権、倫理面の徹底的な保護が目的です。
具体的には、AIシステムをリスクレベルに応じて分類し、高リスクカテゴリーの画像生成AIにはとくに厳しい基準を設けています。
画像生成AI開発企業に対して、差別的・有害・違法なコンテンツの生成を明確に禁止しているのです。
また、AIシステムの透明性と説明責任を強く求め、学習に使用するデータの出所を明確にし、ユーザーの同意なしに個人情報を利用することを厳しく制限しています。
米国
米国のAI規制へのアプローチは、技術革新の促進とリスク管理のバランスを重視したものです。
2023年10月に発行された大統領令(Executive Order 14110)は、AIシステムの安全性・セキュリティ・信頼性に関する包括的なガイドラインを提供しました。
連邦政府は、国立標準技術研究所(NIST)と連邦取引委員会(FTC)を通じて、画像生成AIの開発と利用に関する拘束力のない指針の策定を推進しています。
AIモデルの透明性向上や潜在的なバイアスの検出、悪用防止のための技術的対策が重点です。
シリコンバレーの主要AI企業(MicrosoftやGoogleなど)は、偽造画像の検出技術や責任あるAI開発に自発的に取り組んでいます。
州レベルでも、AIの法的フレームワークの整備が進められており、プライバシー保護と技術革新の両立を目指しています。
中国
中国は、画像生成AIを国家戦略的技術と位置づけ、きわめて厳格な管理体制を構築しています。
2023年7月13日に発表され、8月15日に施行された「生成式人工智能服務管理办法」は、AIコンテンツの生成と利用に関する詳細な指針を示したものです。
国家インターネット情報弁公室を通じて、AIが国家の政治的イデオロギーや社会秩序に反するコンテンツを生成することを徹底的に防止しています。
さらに、国内AI企業に対して、生成画像の事前検証と継続的な監視を厳格に義務づけています。
国家レベルでのAIセキュリティ評価制度の導入により、画像生成AIの開発と利用に関する厳格な基準が設定されました。
同時に、国内企業によるAI技術の自主開発を積極的に支援し、グローバルなAI技術競争における優位性確保を目指しています。
日本
日本政府は画像生成AIに対して、法的拘束力のある厳格な規制ではなく、ガイドラインを通じた自主規制的なアプローチを採用しています。
2023年に経済産業省と総務省が共同で発表したAIガバナンスガイドラインでは、生成AIサービスにおける透明性の確保や、適切な利用に関する指針が示されています。
注目すべき点は、2024年に施行された改正著作権法です。この改正により、AIの学習用データとして著作物を使用する際の規定が整備され、権利者の利益を不当に害さない形での利用が認められることになりました。
ただし、生成画像への透かし入れなどの技術的規制については、現時点で法的な義務付けは行われていません。
画像生成AIに規制がある理由
画像生成AIに規制がなされる理由には「情報漏えい・流出」や「知的財産権の問題」が挙げられます。
これらの問題は、とくに「画像生成AIでイラストを作りたい!」「SNSにあげたい!」といった方にとって気になる点でしょう。
以下の記事ではイラスト作成におすすめの画像生成AIやコツ、活用事例を紹介しています。法規制や問題の理解とあわせてぜひご覧ください。
画像生成AIでイラスト作成!おすすめ8選や選び方、コツを解説
「イラストを作成するのにおすすめの画像生成AIはどれ?」と気になっていませんか。自分に合った画像生成AIを選べないままでは、AIの恩恵を受けられず、業務効率が下がってしまうでしょう。本記事では、おすすめの8つの画像生成AIや選び方、コツ、活用事例を解説します。
では、画像生成AIに規制がある理由についてそれぞれ詳しく解説します。
情報漏えい・流出
画像生成AIは、個人情報保護の観点から深刻なセキュリティリスクを内包しています。
AIモデルは、大量の画像データを学習に使用するため、意図せず機密性の高い個人情報を取り込むリスクが非常に高いのです。
具体的なリスクとして、顔写真、医療記録、金融情報などのセンシティブな個人データが、明示的な同意なくAIモデルのトレーニングデータに含まれる可能性があります。
たとえば、クローズドな環境で撮影された写真や特定個人を識別可能な画像が、無許可で学習データとして使用されるケースが多数報告されています。
AIシステムの高度な情報抽出能力は、元のデータに含まれる機密情報を再構成できるセキュリティ上の脆弱性を生み出すものです。
企業の内部文書や個人の機微な情報が、AIによって予期せぬ形で再生成されるリスクは、個人と組織の両方にとって重大な脅威となっています。
知的財産権の問題
画像生成AIには、クリエイターの権利を保護し、健全な創作環境を維持するための規制が不可欠です。
現状では、多くのAIモデルが許諾を得ないまま収集した画像データを使用しており、著作権侵害の問題が深刻化しています。
また、AIモデルがオリジナル作品と類似性の高い画像を大量生成する状況により、クリエイターの経済的基盤が脅かされる事態となりました。
実際に、複数の著名なクリエイターがAI企業に対して著作権侵害の集団訴訟を提起しています。
加えて、AI生成画像の法的帰属や使用権に関する国際的な基準が未整備であり、創作活動の継続に支障をきたす事例も報告されました。
このような状況を踏まえ、クリエイターへの適切な対価還元の仕組みや、著作権保護の枠組みの早急な構築が望まれます。
画像生成AIに対し主張される規制案
画像生成AIに対する規制案は、技術の急速な発展にともない、多角的な観点から提案されています。主な規制案は以下の点に焦点を当てたものです。
- データの透明性確保
- 倫理的利用の担保
- プライバシー保護
とくにEUとOECDが主導し、以下のような具体的な規制案が議論されています。
AIモデルの学習データに関する透明性確保がもっとも重要な規制案の1つです。学習データの出所を明確に開示し、著作権者の許諾を得ることを法的に義務化する提案が検討されています。
プライバシー保護の観点から、個人を特定可能な画像の無断利用を禁止する規制案も提起されています。
個人を識別できる画像の学習利用に対して、明確な同意を必須とし、違反した場合の法的ペナルティを設定する提案が議論されているのです。
さらに、生成された画像の悪用を防止するための技術的規制も重要な論点です。
偽造画像の検出技術の義務化、生成画像への電子透かしの埋め込み、AIが生成した画像であることの明確な表示などが具体的な規制案として提案されています。
出典:
Artificial intelligence(OECD)
AI Act(European Commission)
The IEEE Global Initiative 2.0 on Ethics of Autonomous and Intelligent Systems(IEEE)
画像生成AIは著作権侵害にあたるのか
画像生成AIは、大量の著作権のある画像データを学習に使用するものです。そのため、画像生成AI自体が著作権侵害にあたるかどうか、複雑な法的論点となっています。
米国の著作権法におけるフェアユースによれば、以下の4つの基準で判断されます。
※著作権法における重要な法的概念、著作権者の許可なく著作物を一定の条件下で利用できる例外規定
- 利用の目的と性質
- 著作物の性質
- 利用された量と実質性
- 潜在的市場への影響
現在進行中の訴訟では、AIが生成する画像が「変形的利用(transformative use)」に該当するかが争点となっています。
具体的な訴訟事例としては以下のものがあり、これらの訴訟では、AIモデルの学習データ使用が原著作者の権利を侵害しているかが法的に審理されています。
- Getty Images vs Stability AI
- Sarah Andersen vs Stability AI
- Adobe vs Midjourney
現時点では、画像生成AIの著作権侵害について明確な法的結論は出ていません。各国の裁判所が個別に判断を下す段階にあり、今後の判例が重要な先例となると考えられます。
出典:What is Copyright?(U.S. Copyright Office)
画像生成AIをめぐる規制は世界各国で進行中
画像生成AIは、ユーザーの入力データや生成物を学習する仕組みです。この仕組みから、とくにアーティストと画像生成AIとの間で論争が起こり、世界各国で規制の整備が進んでいます。
誰しもがまるでアーティストのような作品を作れる状況ですが、アーティストの権利やユーザーの安全を考えると、技術の進歩にともなってある一定範囲の制限をする必要があるでしょう。
法的なルールは、今現在でも明確には決まっていません。この点、画像生成AIをめぐる問題や規制を知り、ユーザー自身のリテラシーを高めていくことが重要です。
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記事を書いた人
木村凛日
フリーランスのSEOライター・ディレクター。
AIツールを活用したリサーチ・画像生成を日々行っています。
200名以上のWebライターの育成経験あり。
メディア分析・リライトも担当しています(他メディア)。
パンダが好きです。
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